研究プロジェクトの3年間の最終年度である。11q23転座型白血病は白血病/骨髄異形成症候群(MDS)にみられる染色体転座で、乳児白血病や治療関連白血病/MDSに多くみられる。この11q23転座型白血病/MDSにおいて、MLL遺伝子が関与する白血病/MDSは既存の治療では生命予後が不良であるため、新しい治療法の開発が望まれている。これまで、われわれはMLL遺伝子再構成を認める乳児白血病においてFLT3遺伝子変異が関与することを報告した。FLT3遺伝子変異は白血病の増殖に関与して予後を規定するため、signal pathwayを抑制することが重要であると考えた。そこで、免疫抑制剤であるRapamycinが細胞増殖抑制作用、アポトーシス誘導作用および分化促進作用を有することに着目した。このRapamycinはFLT3 signal pathwayを抑制することが予測されている。MLL遺伝子が関与する11q23転座型白血病細胞株および白血病細胞検体を用いてRapamycinの抗腫瘍効果およびその機序を明らかにすることが本研究の目的である。急性骨髄性白血病細胞株において分化誘導能がみられたが、高濃度のRapamycinが必要であった。いつくかの細胞株でアポトーシスがみられたが、MLL遺伝子が正常な細胞株と同程度であった。細胞増殖能はRapamycinを投与すると抑制されたが、これもMLL遺伝子が正常な細胞株と同程度であった。さらに、他の抗がん剤との相乗効果をアポトーシス誘導能で検討した。拮抗する薬剤はなかったが、どれも付加的効果で、相乗効果はみられなかった。
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