MAPキナーゼカスケードのファミリーであるExtracellular-signal-regulated kinase 5 (ERK5)は酸化ストレスや増殖因子の刺激により活性化され細胞生存や増殖、分化などの多彩な細胞動態に関与している。我々はラット慢性進行性腎炎モデルと培養メサンギウム細胞(MC)を用いて腎炎進展におけるERK5の役割を検討した。ラットの片腎を摘出後、抗Thy 1.1抗体を投与して腎炎を惹起し進行性メサンギウム増殖性糸球体腎炎モデルを作成した。腎炎惹起後、8週まで経時的に組織を摘出し、同時に糸球体を単離し蛋白に可溶化した。PAS染色にて糸球体の細胞増殖や細胞外基質(ECM)の蓄積を観察し、免疫染色にてERK5の発現変化を観察した。また単離系球体におけるERK5活性を特異的リン酸化抗体によるkinase assayにより検討した。酸化ストレスとアンジオテンシンII(Ang II)刺激による培養MCのERK5活性を検討した。腎炎ラット組織では1-2週をピークとしたMCの反応性増殖後に、週数に伴い糸球体のECM蓄積増加がみられ、同部位におけるERK5の発現が増加し、活性酸素とAng IIも同様に産生増強がみられた。また単離糸球体においてもERK5活性の上昇がみられた。さらに活性酸素とAng IIの重金により培養MCにおけるERK5の活性が上昇した。この活性増強はMEKインヒビターU0126により濃度依存性に阻害された。酸化ストレスやAng IIにより活性されたMC内のERK5はECMの蓄積に関与すると考えられた。今後はMC内のERK5によるECM蓄積のメカニズムをsiRNAを用いてERK5を阻害することにより解明していく。
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