研究概要 |
ロタウイルスは乳幼児の重症下痢症の原因として最も重要なウイルスである。ロタウイルスの外郭蛋白の1つであるVP7は中和抗体を誘導する抗原である。一方、アプタマーは短鎖の一本鎖オリゴヌクレオチドで、特定の物質と結合あるいは何らかの作用を有するものである。本研究ではヒトに感染する主要な5つの血清型(G1,G2,G3,G4,G9)のロタウイルスVP7に対するDNAアプタマーの作成法の確立を目的としている。 本年度に実施した研究の概要を以下にまとめる。 1.5つの血清型に属するロタウイルスの代表株をMA104細胞にて培養 2.Plaque purificationを3回繰り返して単一のウイルスを選択 3.培養上清よりロタウイルスRNAを抽出 4.RT-PCR法によりロタウイルスVP7の全領域を増幅 5.増幅したPCR産物のシークエンス 6.バキュロウイルス発現ベクターにクローニング 7.遺伝子組み換えバキュロウイルスの大量培養によりロタウイルスVP7を大量に発現 ロタウイルスのVP7の全長をnativeなウイルスの配列のままバキュロウイルスの発現系に組み込んでも血清型にかかわらず蛋白の発現が可能であった。しかしながら、5つの血清型の違いにより発現量にかなりの相違を認めるため、発現量が低いものに関してはプロモータ配列の改変等を考慮する必要がある。 今後は、発現した蛋白質を精製し、それぞれの血清型を特異的あるいは非特異的に認識するDNAアプタマーの作成、選択、評価を行う予定である。
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