研究概要 |
学習・記憶メカニズムの基礎と考えられているシナプスの可塑性の制御機構にN-カドヘリンのエンドサイトーシスが関連していることが報告されているが,その機序は不明である。本研究では,N-カドヘリンのエンドサイトーシスの機序を明らかにすることにより,神経シナプスの制御機構の一因の解明を目的とした。 平成18年度の実験において,ラット脳から遠心分離を繰り返すことにより,post synaptic densityが豊富に含まれる分画(PSD fraction)を安定して得られる実験系を確立した。平成19年度,このPSD fractionに含まれるN-カドヘリンのエンドサイトーシスを起こすことに成功した。PSD fractionにATP,GTP,及びラット脳分画を加えて加温することによりN-カドヘリンのエンドサイトーシスを起こさせ,低速での遠心分離により,その上清中に分離した後,超遠心によりペレットとして得ることができた。そのペレットをN-カドヘリンによるウェスタンブロットを用いることで,N-カドヘリンエンドサイトーシスを定量化することが可能となった。しかしその割合は微量であり,N-カドヘリンエンドサイトーシスに関わる分子を用いての定量的実験を行うことは困難であるため,現在,N-カドヘリンエンドサイトーシスの効率を高めるための条件設定を行っている。 またグルタミンレセプターアゴニストでるAMPA,およびNMDAがN-カドヘリンエンドサイトーシスに関連していることが示唆されているが,それらの精製を行い,N-カドヘリンエンドサイトーシスへの影響を研究している。
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