【方法】生体肝移植後において、小児外科的基準(主に肝臓の状態)および小児科学的基準(主に免疫の状態)をともに満たした小児に対し、麻疹、風疹、水痘、ムンプスの生ワクチン(抗体陰性の項目のみ)を、4週以上の間隔をあけて通常量接種した。接種にあたっては、希望者に生ワクチンの重要性と危険性を十分理解していただき、書面で同意を得た。抗体が陽性化しない場合、あるいは一度陽性化したものが再び陰性化した場合に、再接種を考慮した。 【結果】平成19年3月までに、合計12症例(2-17歳)に対し、のべ47接種(再接種含む)行った。いずれの接種においても、拒絶反応や重篤な副反応は認められなかった。抗体陽転率は、麻疹100%(11症例で、11接種/11接種)、風疹100%(10症例で、10/10)、水痘82%(8症例で、9/11)、ムンプス鳥居株43%(3症例で、3/7)、ムンプス星野株88%(7症例で、7/8)、であった。ワクチン接種後に上記疾患に罹患した者は1症例(水痘)であった。この症例においては、ワクチンによる抗体獲得ができていなかったが、重症化はしなかった。ワクチンにより抗体を獲得した者の中で、その後不顕性感染しブースター効果を得た者(抗体価が有意に上昇した症例)が3症例(ムンプス2症例、水痘1症例)あった。 【考察】肝移植後小児12症例に対し、のべ47回の生ワクチン接種が安全に行われた。抗体獲得は、麻疹、風疹において良好であった。水痘においてもおおむね良好であったが、11症例中3症例で再度陰性化したため再接種が必要であった。ムンプスにおいては、星野株での免疫の獲得が比較的良好であった。以上より、健常者への生ワクチン接種とほぼ同等の抗体獲得が、安全に得られるものと考えられたが、一部抗体持続について問題があると考えられた。来年度、更に抗体持続を重視し、より適正で効果的な接種を検討する。
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