研究概要 |
【はじめに】本年は,SF-36を用いて青年期の先天性心疾患患者のQOLを調査した.SF-36は,8つの下位尺度[身体機能,日常役割機能(身体),日常役割機能(精神),全体的健康感,社会生活機能,体の痛み,活力,心の健康]により構成される健康関連QOLの包括的尺度であり,性・年代別の国民標準値と比較して検討することができるものである. 【方法】当院成人先天性心疾患外来受診中の16歳以上の患者136人に対し,SF-36を外来受診時に記載してもらい,調査した.また,同時に血漿BNP値などの測定もおこなった.患者群はsmall VSDをはじめとする軽症心疾患で修復術未施行群(N群),ファロー四徴症をはじめとする修復術施行群(R群),Eisenmengerやチアノーゼが残存する修復術不能群(U群),Fontan術後群(F群)と分類した.SF-36の各下位尺度を性・年代別の国民標準値と比較するとともに,またNYHA分類や血漿BNP値との比較検討もおこなった. 【結果】N群:48名,R群:69名,U群:14名,F群:5名であった.N群では,各下位尺度とも性・年代別の国民標準値と比較し有意差はみられなかった.R群,F群ではすべての下位尺度において軽度低下していた.U群では特に身体機能,日常役割機能(身体)といった身体機能に関する尺度や活力,全体的健康観が著明に低下していた.NYHA分類では,I度の群では各下位尺度とも性・年代別の国民標準値と有意差はみられなかったが,II度・III度になるにつれ,身体機能,日常役割機能(身体)といった身体機能に関する尺度だけでなく,心の健康などの精神心理的な尺度も低下していた.血漿BNP値とSF-36での身体機能には有意な負の相関が見られた(r=-0.35,p<0.001). 【結語】青年期に達した先天性心疾患患者においては,根治術を施行できた場合でも身体的・精神的問題を抱えている場合があり,これらのQOLを評価する尺度を用いることで,今後のよりよいケアに結びつけることができると考えられた.来年度以降は疾患特異的なQOL尺度の開発をおこなっていく.
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