グリコーゲン脱分枝酵素[glycogen dedranching enzyme (GDE);遺伝子シンボルAGL]は解糖系の重要な酵素で、AGL活性が欠損するとグリコーゲンが筋肉に蓄積し筋萎縮が起こり、歩行困難になることが多い。また、グリコーゲンが肝臓に蓄積すると肝腫大から肝硬変に至る。 本年度は、グリコーゲン脱分枝酵素の機能ドメインと発現についての研究するために、AGL活性の欠損症である糖原病III型についてAGL遺伝子解析を行った。 [結果] 糖原病III型13例(うちドイツ人3人、カナダ人1人、アフガニスタン人1人、イラン人1人、トルコ人2家系3人、エジプト人4人)を解析した。 ドイツ人のうち、患者1はW255Xのヘテロ接合体であった(他方の遺伝子変異は未同定)。患者2はR864Xのホモ接合体であった。患者3はIVS21+IG>Aのヘテロ接合体であった(他方の遺伝子変異は未同定)。カナダ人患者4は1019delAとW1327Xの複合ヘテロ接合体であった。アフガニスタン人患者5は3202-3del TAの、イラン人患者6は1859-69del 11bpのホモ接合体であった。トルコ人のうち、患者7と8は兄弟でIVS7+5G>Aのホモ接合体であった。患者9はIVS21+5insAのホモ接合体であった。エジプト人のうち、患者10は1389insGと22223-4del GTの複合ヘテロ接合体であった。患者11は4041del Tのホモ接合体であった。患者12は1859番目の塩基がTからCに変異しており620番目のアミノ酸がロイシンからプロリンへ置換されていた(L620P)。患者13はエクソン27からイントロン27にかけて1525bpの欠失が認められた。 すべての患者で酵素活性は欠損していた。 以上の結果より、糖原病III型のAGL遺伝子変異は多様な変異が存在する事が明らかになった。
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