ムコ多糖症I型製剤が国内で承認され、酵素補充療法の臨床応用がついに本邦でも開始された。根治的治療として期待される中、短所として頻回投与、薬剤費用、継続の必要性などが実際の臨床の場面でも問題点として現れてきた。また、角膜、脳、軟骨はやはり効果が期待できずにいる。そのため、「埋め込み型酵素補充療法」による安全で長期効果を発現する治療法の開発が急務である。そこでまず、用いる間葉系細胞について、その性質を明らかにした。骨髄由来ヒト間葉系細胞および子宮内膜由来ヒト問葉系細胞についてβグルクロニダーゼ活性を測定し、それぞれ66.2、168.0 nmol/mg proteinであり、さほど活性値は高くなかった。これらの細胞をムコ多糖症VII型マウス大腿筋に移植し、1週間、4週間での移植周囲の筋肉内βグルクロニダーゼ活性を測定したところ、正常の10〜50%程度の酵素活1生値を示した。今後、他臓器へのβグルクロニダーゼ活性を測定し、酵素の細胞間輸送の効率を検討していく。 次に、βグルクロニダーゼ遺伝子が発現するレトロウイルスベクターを用いて、遺伝子導入した細胞を移植するため、293T細胞を用いてトランスフェクションを試みた。トランスフェクション後の酵素活性は3406 nmol/mg proteinと、293T細胞の内因性活性の10倍以上もの活性を示した。このβグルクロニダーゼ発現レトロウイルスベクターおよびEGFP発現レトロウイルスベクターを用いて、パッケージ細胞にトランスフェクションし、各遺伝子が発現するレトロウイルスを作成し、上記問葉系細胞に感染させ、同様の移植実験を試みる予定である。
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