Granulysin (Gln)はNK細胞やT細胞の細胞障害性顆粒中に含まれる蛋白で、抗菌、抗腫瘍効果を有する。成人のがんでは、がん組織中のGln発現量とその予後との相関が報告されている。そこで、過去に蓄積された種々の病型の小児悪性リンパ腫(ML)組織からRNAを抽出してcDNAを合成し、mRNA発現について定量PCRで検討した結果、GlnはMLの組織型に依存した発現様式を示すことが明らかとなった。すなわち、Glnは全身性未分化大細胞性リンパ腫(ALCL、6例)では高発現していたのに対し、バーキット型リンパ腫(4例)ではほとんど発現を認めず、両者における発現レベルは大きく異なっていた(p<0.0001)。また、ホジキンリンパ腫(3例)では中等度の発現を認め、B前駆細胞性(2例)およびT前駆細胞性リンパ芽球性リンパ腫(4例)、びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫(3例)では発現を認めたものの低値であった。さらに、ALCL腫瘍組織の薄切標本を用いて免疫組織化学染色によりGlnの発現を検討したところ、リンパ球のみでなく、腫瘍の本体であるALCLのhallmark細胞にもその発現が示唆された。以上の結果から、ALCL組織では、腫瘍細胞に対して反応性に浸潤しているNK細胞やT細胞に加えて、腫瘍細胞自身もGlnを発現しているために、他の病型のMLに比較してその発現レベルが著しく高いことが示唆された。今後、さらに症例数を増やして検討を進めるとともに、小児MLにおけるGln発現と予後との関連性についても解析を予定している。また、ALCLのhallmark細胞におけるGln発現の意義や、その発生起源との関連性について検討を行うことにより、同リンパ腫の発症機構や病態、細胞特性の解明に結びつくことが期待される。
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