研究概要 |
先天代謝異常症では、近年造血幹細胞移植や酵素補充療法といった根本的治療が可能となり、早期診断が急務となってきている。しかし、病因遺伝子が明らかであり遺伝子検査が未発症もしくは発症早期の診断の有力な根拠となりうるにもかかわらず、実際的な低コスト・迅速な遺伝子検査体制については、いまだ検討段階にある。本研究では遺伝子変異の新しい検査方法について検討し、将来の遺伝子検査体制の開発をめざした。 ・遺伝子変異スクリーニング法の確立 10の遺伝子(ATP8B1, ABCB11, JAG1, OTCD, IDS, GUSB, IDUA, FGFR3,DMD,FCMD)についてPCR増幅法を確立した。簡便な検査を目指すため全エクソンに対し温度設定、使用ポリメラーゼなどについて、まったく同一条件としたPCR条件の確立をめざした。全てのアンプリコンを全く同一の条件に統一つることはできなかったが、1遺伝子あたり1〜3条件に集約できた。これにより、予めPCR反応に必要なプライマーのセットを準備し、患者DNA検体とPCR試薬の混合物を添加するだけで半自動的に遺伝子変異探索の検討ができるようになった。 ・スクリーニング法の評価 これまでに遺伝子解析が行われた既知の遺伝子変異をもつDNA検体を用いて、DHPLC法およびリシークエンシング・アレイ法による変異検索の検出検討を行った。直接シーケンス法による遺伝子変異の検出率と比較した。研究申請段階では、未確立であったアレイ技術によるリシークエンシング・アレイ法による解析についても検討し、キャピラリー式の直接シークエンス法と同等の検出力をもつことが確認できた。 ・遺伝子検査システムの確立 これら新規遺伝子解析法を併用した遺伝子検査システムを、遺伝子変異が未知の検体へ応用を開始した。全国の医療施設からのムコ多糖症、OTC欠損症など受け入れて検査を開始した。 ・遺伝子検査システムの応用 本研究では、PCR条件を画一化することによって半自動化した検査体制の確立が期待できることを検証した。各疾患の病因遺伝子にある全エクソンのプライマーセットをあらかじめ準備したPCR用プレートを作製し、臨床的にある遺伝性疾患が疑われた際に、患者DNAサンプルとPCR試薬のミックスをこのプレートに投入することで、遺伝子の検討を迅速に行える。この方法は、アレイ技術による解析にも応用でき有用な方法と考えられた。今後もより迅速で確実な先天疾患の遺伝子診断システムの拡充にむけた検討が必要と思われる
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