脳室周囲白質軟化症(以下、PVLと賂す)モデルラットを使用したEPOの効果に関しては申請者のグループで脳の組織学的な評価を行い、神経保護作用に有用性が確認され、現在、英文雑誌に投稿中であるが、少量のEPOが有効であることのメカニズムの解明や、長期生存させた後の運動機能や認知機能の改善といった機能的な評価が十分なされていなかった。 EPOは今まではかなり高容量でないと脳血液関門を通過しないとされており、臨床的な使用量の10-25倍量を用いて神経保護作用があったとの研究報告があったが、副作用に対する懸念もあった。しかしながら、幼弱な動物では生理的に血管内皮が脆弱であり、低酸素虚血によって脳血管関門が破綻することが知られていたため、低容量でも充分効果が期待できることが考えられていた。そのため、オリゴデンドロサイト後期培養細胞を用いて過酸化水素を用いた細胞傷害を作成する実験系を作り、低容量のEPOを用いて細胞傷害の保護作用の有無を検討した結果、低容量で十分な細胞保護作用があることが明らかになった。また、今回の交付で購入した画像行動解析装置を用いて低酸素虚血傷害を受けた動物が成獣になってからどのような機能障害を引き起こし、さらにEPOを用いて神経障害が軽減された場合は運動機能的がどのように改善するかを評価することを目的に実験を進めた。コントロールの動物とPVLモデル動物を一定の大きさの容器に入れ、探索行動を一定時間記録し、移動距離と行動パターンの解析を行った。現時点では正常な動物のデーターを集めている段階であるが、小規模パイロットスタディーでは異常行動が観察されており、PVLモデルに対してEPOの行動面からの効果が検討できると考えられている。
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