TARC(CCL17)トランスジェニックマウスを用いて人工的に創を作成し、その治癒過程を野生型マウスと比較した。TARC(CCL17)トランスジェニックマウスはK14プロモーターにTARCがついているため、表皮特異的にTARCが発現している。6mmパンチを用いてマウスの背部に穴をあけ、創の大きさを経時的に測定した。創は大凡10-14日以内に閉創するのだが、創傷治癒におけるどの時期にTARCが最も影響を及ぼすかを見た。TARC(CCL17)トランスジェニックマウスでは比較的早期(第3日目)の段階から野生型マウスと比較して創傷治癒の促進が見られ、その後持続的に野生型マウスと比較してより早く皮膚欠損が縮小し、閉創した。TARCの創傷治癒への作用機序として考えやすいのが、炎症細胞の創への誘導であることを考えると予想外に早い段階から効果が見られていると言える。次いで、H&E染色を行い、創の深さ、上皮化の状態、細胞浸潤の評価を行った。全体的に細胞浸潤がTARC(CCL17)トランスジェニックマウス群で増加していたが、どのサブポピュレーションが増えているかに関しては現時点でははっきりしていない。次に、野生型マウスに人工的に創を作成し、これにrecombinantのTARCを加えて創傷治癒について検討し、TARCトランスジェニックマウスと同様の結果が得られるかどうか調べた。野生型マウスの背部に10mm大の皮膚欠損を作成し、種々の条件でrecombinantのTARCを加えた。傾向としてはTARC添加群で創の縮小の促進がみられているが、今後例数を増やして検討する予定である。
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