前年度(H18年度)には、ADAR1遺伝子の発現ベクターを作製し、色素細胞および角化細胞に導入し、ADAR1を過剰発現させた。その際の色素関連遺伝子であるチロシナーゼおよびMART-1についての発現量の変化をmRNAレベルで調べたところ、有意な変化は見られなかった。 本年度は、上記の結果をふまえて、(1)本研究で用いるイノシン特異的mRNA切断によるADAR1編集基質同定手法の検討および(2)正常色素細胞においてsiRNAを用いたADAR1遺伝子発現抑制を起こした際のDNAマイクロアレイを用いた包括的遺伝子発現変化の観察を進めた。(1)のイノシン特異的mRNA切断を行うためには、多くのステップについて予備実験による条件設定が必要である。本実験への準備を進めているが、いまだ本実験に進むための条件設定は進んでいない。(2)については、ADAR1遺伝子のsiRNAを設計して、遺伝子抑制させた時のチロシナーゼおよびMART-1についての発現量の変化をmRNAレベルで調べたところ、有意な変化は見られなかった。現在まで明らかになっていない、ADAR1遺伝子抑制によって影響を受ける遺伝子を明らかにするため、正常色素細胞及び角化細胞でADAR1を抑制させ、DNAマイクロアレイを用いて包括的遺伝子発現変化を観察した。遺伝子の発現の変化はいくつかの遺伝子で見られたため、現在、リアルタイムPCRを用いて、マイクロアレイで得られた結果の確認実験を進めている。また、我々のグループで継続的に行っている遺伝性対側性色素異常症患者のADAR1遺伝子変異の検索は続けて行っている。
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