表皮角化細胞(HaCaT)を培養し、各種活性酸素とその阻害剤の影響を調べるにあたり、最初にHaCaT細胞自身がどれくらいの活性酸素を産生しているか、また活性酸素の阻害剤により活性酸素産生が変化するかを調べることにした。活性酸素には一重項酸素、スーパーオキサイド、ヒドロキシルラジカルと過酸化水素の4つが存在するが全て、過酸化水素に代謝されるので、dichlorofluoresinを用いて過酸化水素を測定した。この方法で数マイクロモルの濃度の過酸化水素を測定できるが、HaCaTの産生する過酸化水素は検出限界以下であった。HaCaTが産生した活性酸素が一酸化窒素やその代謝物と反応し、過酸化水素以外の物質にシフトした可能性があるので一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NAMEを投与したが、結果は同様であった。L-NAMEは一酸化窒素を減少さすことで逆に活性酸素の産生を促進するという報告が他の細胞であったが、今回この効果はHaCaTではみられなかった。このことから、HaCaTはなんらかの刺激がないと過酸化水素とその代謝の上流にある一重項酸素、スーパーオキサイド、ヒドロキシルラジカルをほとんど産生しないと考えられる。また、他の細胞で報告があったL-NAMEでも過酸化水素の産生は増加しないことも確認された。今後は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であるアロプリノールやNADPHオキシダーゼ阻害剤アポサイニンを投与し、HaCaTの過酸化水素産生が増加するか検討するとともに、HaCaTが過酸化水素を産生する刺激条件も検索する予定である。
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