エピプラキンは、自己免疫性表皮下水疱症の自己抗原として同定された表皮細胞内分子であり、その一次構造ならびに遺伝子構造は既に明らかになった。またノックアウトマウスやin vitro相互作用の実験から、その機能の一部が明らかになった。 本研究では、まずヒトのエピプラキン分子サイズを抗体を用いて決定し直すことを目標にあげた。その第一ステップとして、カルボキシ末端部に対するペプチドを2種類、アミノ末端部に対するペプチドを2種類作成した。これを抗原にして、ラットに免疫し抗体を作成し、HeLa細胞抽出物の免疫プロットを行なったが、反応しなかった。エピプラキン遺伝子を含むBACクローンを2種得たが、いずれも十分な5'領域を含んでおらず、また有効な5'RACEも行なえなかった。またHeLa細胞をマトリゲル中で培養すると、10個ほどの細胞が小塊を形成するが、エピプラキンはその小塊の外側を縁取るように発現することが明らかになった。HeLa細胞をプラスチック上で培養した場合は、2-3層に重層し、その基底層よりには、エピプラキンは発現せず、上層にのみ発現する傾向にあった。これは表皮でのエピプラキンの発現に酷似しており、空間的発現の違いが、細胞の空間的位置の違いにより制御されている可能性が示唆された。最後にマウス・ケラチン17の特異配列断片をラットに免疫し、ケラチン17に対する抗体を得て、マウス表皮細胞で、エピプラキン抗体との二重染色を行なったところ、殆どの染色性が一致した。また創傷治癒過程でのマウス表皮細胞においてもその染色性が殆ど一致した。したがってケラチン17もエピプラキンに結合することが示唆された。
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