本研究は、近年注目される食物アレルギーの抗原同定及び病態解明により診断や治療法を開発することを目的とする。 1)花粉アレルギーに合併する、植物由来食品による口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome: OAS) (1)ハンノキ花粉アレルギーに合併するOASの抗原解析:昨年度、ハンノキ花粉感作とOAS発症の間に有意な相関をみとめたので、ハンノキ花粉アレルギーに合併するOASにおける責任抗原を検索した。カバノキ科花粉(ハンノキ、シラカンバなど)の感染特異的蛋白質PR-10とプロフィリンに対する特異的IgE抗体測定を実施した。方法は、ハンノキと同じカバノキ科に属すシラカンバ花粉PR-10(Bet v 1)とプロフィリン(Bet v 2)を抗原として用いCAP法で測定した。その結果、Bet v 1に対する特異的IgE抗体陽性率は43.7%、Bet v2は27.3%であった。よって、PR-10はハンノキ花粉アレルギーに合併するOASの主要な責任抗原である可能性が示唆された。(2)OASにおけるカモガヤ花粉、ブタクサ花粉、ヨモギ花粉の関与について:昨年度の春の花粉症に続き、本年度は夏と秋の花粉とOASとの関連を検討した。2006〜2007年に受診した皮膚アレルギー疾患患者627例を対象として解析を行った。その結果、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギの花粉感作は植物性食品のOAS発症との有意な相関はみとめられなかった。しかし、果物別にみると、メロンのOASと、カモガヤやブタクサ感作との間に相関をみとめた(p<0.05)。よって、メロンのOASの発症は、カモガヤやブタクサのアレルギーに関連していることが示唆された。 2)納豆による遅発性アレルギーの抗原解析:昨年度、IgE-immunoblottingにより特定した共通バンドの蛋白質を抽出し、アミノ酸配列解析を実施した。その結果、3種の蛋白質が責任抗原の候補として同定された。 3)食品血液中濃度の解析:小麦食物依存性運動誘発アナフィラキシーの主要抗原、グリアジンの血液中濃度を測定し、運動や解熱鎮痛薬による抗原吸収への影響を検討中である。
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