本研究の目的は、大疱瘡モデルマワスを用いて、自己免疫疾患の治療抵抗性の原因と考えられる長寿命形質細胞を生細胞のまま分離し、その表面抗原、遺伝子発現の解析をすることにより、持続的な抗体産生そして"長寿命"の機序を明らかにすることにある。さらに特異的な細胞表面マーカーや発現遺伝子を同定し、それをターゲットとした治療法の確立を目指す。 平成18年度は、長寿命形質細胞の分離の前段階として、発症前の天疱瘡モデルマウスにB細胞を特異的に除去する抗マウスCD20抗体(以下MB20-11)を投与し、MB20-11の効果を評価した。発症前にMB20-11を投与したマウスはコントロールに比して、形態学的には体重減少を認めず、脱毛・びらんを全く生じなかった。また組換えDsg3を抗原として用いたELISA法にてもDsg3に対する抗体価の上昇を認めず、ELISPOT法にて抗Dsg3抗体生産B細胞数を計測したが、脾臓・骨髄・リンパ節の全てにおいて検出されなかった。以上の結果よりMB20-11は抗体産生B細胞を除去することにより天疱瘡の発症を予防することが示された。 また、モデルマウスの脾臓・骨髄・リンパ節における抗体産生細胞数を経時的にELISPOT法にて計測したところ、脾細胞移植28日経過後も骨髄の抗体産生細胞は少数のままであった。従来オバアルブミンなどの外来抗原を免疫した場合、抗体産生細胞は初めに脾臓などの二次リンパ組織にいるが、時間経過と共に骨髄に移動しそこでニッチを形成すると考えられている。今回の結果から、長寿命形質細胞のニッチが骨髄以外にある可能性が示唆された。 平成19年度は、発症後のモデルマウスにMB20-11を投与し、その効果を評価する。そしてそのマウスから長寿命形質細胞を単離し、その表面抗原の解析を行う。
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