単純ヘルペスウイルス(HSV)に関連した多形滲出性紅斑(herpes-associated erythema multiforme ; HAEM)はHSV発症後に続発するEMである。病変部よりHSV DNAが検出され、末梢血単核球より同様にHSV DNAが検出されることから、HSV DNAの運搬は血行性であると考えられている。我々は末梢血中のCD34陽性細胞がHSV感染後、HSV DNAを保持する機能を有し、CD34陽性細胞数の増加がみられることを報告してきた。 本年度は、健常人末梢血よりCD34陽性細胞を分離、HSV感染後、培養を行ない感染力価、感染効率の検討とランゲルハンス細胞への分化の差違を試みた。結果として、末梢血からのセルソーティングを用いたCD34陽性細胞の分離・HSV感染・培養において、健常人ではCD34陽性細胞が末梢血中で少ないことからCD34陽性細胞を感染・培養系で必要な細胞数が効率的に確保出来ず、難渋しているため、現在、検体量の増加・臍帯血を用いるなどの方法を検討している。 またHAEMは米国では比較的多い疾患であるが、本邦において臨床的にHAEMと診断された症例の蓄積が進んでいない。HSV-2による顔面のヘルペス初感染の1例では経過中にHAEM病変の形成がみられたが、末梢血中CD34細胞の明らかな増加はみられなかった(本症例は第21回ヘルペスウイルス研究会(6月8(木)〜10(土)岐阜県白川郷)にて報告。)。またHSV-2初感染の経過中に髄膜炎を生じた症例(日本性感染症会誌で研究報告)においても、末梢血中CD34細胞の明らかな増加はみられなかった。
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