研究概要 |
平成18年度に予定していた横断面的調査として、北海道大学病院精神科神経科で入院治療を行った統合失調症患者の病識や主観的体験、その他の臨床尺度を退院時に調査した。現在までで63名の患者の評価を行い、データベースを作成し、収集した情報を随時入力した。 また、平成18〜19年度に予定していた短期フォローアップ、転帰調査を行っており、現在までで31名の患者について退院一年後の評価を行った。 横断面的調査の結果を統計解析し、結果の一部に関しては学会で発表した。 (1)病識(SUMD)と精神症状(PANSS)の関連を調査し、第26会日本精神科診断学会にて報告した。PANSS総得点とSUMDの過去の服薬による効果の自覚や過去の症状に対する自覚と帰属,現在の陽性症状の帰属,過去の陽性症状の自覚得点が有意な正の相関を認めた。PANSS陽性尺度得点は,現在,過去の精神障害の自覚や過去の服薬の効果の自覚,過去の服薬の必要性の自覚,過去の精神障害による社会的結果の自覚,過去の症状に対する自覚,現在の陽性症状の帰属,過去の陽性症状の自覚の得点と有意な正の相関を認めた。PANSS陰性尺度得点は,現在,過去の症状の帰属や過去の陽性症状の自覚得点と有意な正の相関を認めた。 (2)薬物療法に対する主観的反応(SWNS, DAI-30)と他の臨床尺度(PANSS, DIEPSSなど)との関連を調査し、第2回日本統合失調症学会にて報告した。SWNSとDAI-30との間に有意な相関を認めなかった。SWNS総得点とDAI-30総得点は、PANSS総得点や各下位尺度、DIEPSSと有意な相関を認めなかった。治療期間が長いほどSWNS総得点が有意に低く、入院期間や教育年数が長いほどDAI-30総得点が有意に高かった。
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