1.日本人のうつ病患者33名で、パロキセチンの治療効果と血漿濃度との関係を検討した。パロキセチンの一日投与量は40mgであり、うつ病症状はMontogomery-Asberg Depression Rating Scale(MADRS)により評価し、パロキセチンの血漿濃度はHPLC法により測定した。その結果、パロキセチンの血漿濃度ど治療効果との間には負の相関が存在し、特に血漿濃度が100ng/mlを超えると、治療効果が有意に低下するとの結果が得られた。現在、本結果の雑誌論文への公表を予定しているところである。 2.6週間後のMADRSスコアが10点以下の対象を治療非反応者と定義した。パロキセチンにより治療したうつ病患者33名のうち、治療非反応者は7名であった。非反応者に対して無作為に、それぞれリチウム600mgまたはオランザピン5mgを4週間併用投与し、治療開始10週間目におけるリチウム併用群とオランザピン併用群の治療効果の比較を行う予定であった。しかしながら、非反応者が7名と少人数であり、現在のところ両治療群間の比較は検討できない状態である。そのため、研究期間終了後も引き続き、対象の収集・募集を行っていく予定である。 3.本研究課題の第3の目的として、うつ病の治療抵抗性に関与する神経伝達物質遺伝多型の検討を行った。対象は、健常日本人575名であり、うつ病の薬物療法の治療反応性に影響を与えるとの報告がある人格特徴を、Temperament and Character Inventory、TCIにより評価し、セロトニントランスポーター(5HTT)、ノルエピネフリントランスポーター(NET)遺伝多型をPCR法により同定した。その結果、5HTTとNET機能が共に低下する遺伝多型を有する女性はTCIの損害回避が高値であり、新奇性追求が低値であった。現在、本結果に関して雑誌論文に投稿中であり、平成20年度に学会発表予定である。
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