【目的】サイトカインあるいは神経栄養因子の遺伝子が統合失調症の候補遺伝子として注目されているが、これら候補遺伝子に関する研究では報告により必ずしも一致した結果が得られていない。そこで今回我々は、サイトカイン・神経栄養因子遺伝子が統合失調症の疾患感受性遺伝子であるか否かを明らかにするために、日本人集団を対象とした関連研究を行った。 【方法】対象はDSM-IVにより統合失調症と診断された者399人(男性212人、平均年齢40.6[14.7]歳)、および精神疾患既往歴のない健常対象者440人(男性230人、平均年齢38.0[10.4]歳)である。本研究は新潟大学医学部遺伝子倫理審査委員会の承認を得ており、対象者には研究について十分な説明を行い事前に書面にて同意を得ている。 Brain-derived neurotrophic factor遺伝子の3つの多型、v-erb-b2 erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 3 (ERBB3)遺伝子のハプロタイプ・タグSNPsを含む6多型、tumor necrosis factor-α遺伝子のプロモーター領域の4多型、interleukin1遺伝子クラスターの9多型、についてTaqMan法により遺伝子型判定を行った。 【結果】これらの遺伝子における、遺伝子型、アレル、ハプロタイプ頻度のいずれも両群間で有意な差を認めなかった。 【考察】日本人においては、これらの遺伝子多型と統合失調症との関連は否定的だった。ただし、ERBB3遺伝子以外の遺伝子については、当該遺伝子のすべての領域をカバーしているわけではないことから、マーカー数を増やした解析が必要とされる。また、第2種の過誤の可能性は完全には否定できず、さらにサンプル・サイズを増やした研究やメタ解析が望まれる。
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