これまでの統合失調症死後脳前頭前野を用いたDNA chip解析の結果から、統合失調症において発現が減少しており、かつ有力な統合失調症候補遺伝子座と考えられている8p、13q、22qに位置する遺伝子として、6つの遺伝子を同定した。さらに、統合失調症患者と健常対照者由来の血液サンプルから得られたDNAにより、既知のSNPを用いた遺伝子相関研究をおこなった結果、それらの遺伝子のうち13qに位置し、転写因子をコードしている遺伝子について、プロモーター領域に存在する一つのSNPと統合失調症との有意な相関をみとめた。さらに、そのプロモーター上のSNPは同遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性があることを、死後脳前頭前野を用いたタンパク定量により見出した。また、ダイレクトシークエンス法による遺伝子配列解析をおこない、同遺伝子のプロモーター及びエクソン領域について新たな遺伝子多型を検索した結果、プロモーター上に位置する一塩基の変異を二つ検出した。そのうち一つの変異については健常対照群にみられず、統合失調症患者にのみみとめた。また、同遺伝子のヒト脳における発現はこれまでに報告されていなかったため、死後脳切片を用いて組織学的な検討をおこなった。その結果、同遺伝子は、統合失調症の病態に大きく関わると推測されているグルタミン酸作動性ニューロンに豊富に発現していることを見出した。これらの手法については論文「DNAアレイと脳バンク」(分子精神医学、2006)に報告した。
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