研究概要 |
対象と方法:愛媛大学医学附属病院精神科神経科に通院中の児童のうち、DSM-IVに基づいてAD/HDと診断した10例を対象とした。発達障害、精神疾患の除外診断だけでなく、精神生理機能の障害、特に睡眠障害の有無についても検討を行った。同意が得られた症例に対し、Psychomotor Vigilance Test(PVT)を用いて覚醒度を、前頭葉機能検査を用いて前頭葉機能の評価を行った。 結果:平均年齢は8.1歳±2.5で、すべて男児であった。1例が不注意優勢型、9例が混合型であった。Wechsler Intelligence Scale for Children 3rd・ ed.(WISC-III)を9例に対して行った結果、FIQ:98±15, VIQ: 101±10, PIQ:95±19であった。Children's Sleep Habits Questionnaire日本語版(CSHQ-J)の平均値(8例)は52.0で、欧米でのカットオフ値41.0を上回った。眠障障害によるAD/HD様症状を呈している症例を除外するため、質問紙による行動評価だけでなく、睡眠呼吸障害の可能性がある症例に関しては、パルスオキシメータを用いた精査も行い、睡眠呼吸障害が無いことを確認した。PVT・前頭葉機能検査は3例に施行しえたが、個人差が大きく、反応時間などに一貫性は認められなかった。 考察:10例と症例数が少なく、臨床類型にも偏りが生じ、これまでの結果から臨床類型の妥当性を検証するに至らなかった。覚醒度,前頭葉機能の評価においても、症例数を増やして検討する必要があり、病態との関連は現段階では明らかではない。CSHQは、社会・文化の違いなどの影響が大きく、本邦でのCSHQ-Jのカットオフ値を明らかにすることが必須である。そうすることで、睡眠障害に付随してAD/HD様症状を呈している症例を抽出できる可能性が示唆される。
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