研究概要 |
SCIDにより診断された社会不安障害(SAD)患者1名および健常者3名に対して、functional MRI(fMRI)を施行し症状誘発時の脳機能を検討した。社会不安症状はLSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale)、うつ症状はHDRS(Hamilton Depressive Rating Scale)によって評価した。fMRIの症状誘発課題として課題条件では受付や会議などの対面場面を映像呈示し、対照条件では同じ場所で人物の映っていない映像を呈示した。得られた画像を用いてSPM2解析を行い、課題条件時に強い賦活が得られた部位をp<0.001を有意水準として算出した。 SAD患者はスピーチ恐怖に伴う赤面、声の震え、動悸などの症状がありLSASの総得点は107点であった。健常者のLSASはそれぞれ20、7、4点、HDRSは患者が13点、健常者は0、1、0点であった。画像解析の結果、患者は右上側頭回、両側海馬傍回,左後頭葉襖部に賦活がみられた。健常者では3名に共通して右上側頭回に、2名に共通して左上側頭回、左海馬傍回、左内側前頭皮質に賦活を認めた。右海馬傍回、両側襖部はそれぞれ健常者1名のみ賦活が認められた。 SADに関するこれまでの画像研究では主に扁桃体の機能異常が指摘されているが、報告数や症例数が少なく、また他の脳部位についての検討は十分ではない。今回賦活が得られた側頭回や海馬傍回、懊部は視覚認知や情動を伴う記憶機能に関与すると言われており、SADとの関連が示唆されている。このことから本研究での賦活課題は社会不安症状の検討に有効であると考えられた。また内側前頭皮質の賦活は健常者のみで得られておりSAD患者におけるこの部位の機能異常が考えられるが、今回は症例数が少なく統計処理は行えなかった。次年度以降、症例数を増やして検討を続ける予定である。
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