SCIDにより診断された社会不安障害(SAD)患者4名および健常者8名に対して、functional MRI(fMRI)を施行し症状誘発時の脳機能を検討した。社会不安症状はLSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale)、うつ症状はHDRS(Hamilton Depressive Rating Scale)によって評価した。fMRIの症状誘発課題として課題条件では受付や会議などの対面場面を映像呈示し、対照条件では同じ場所で人物の映っていない映像を呈示した。得られた画像を用いてSPM2解析を行い、課題条件時に強い賦活が得られた部位をp<0.001を有意水準として算出した。 SAD患者は男性2名女性2名、平均年齢32.7歳、健常者は男性5名女性3名、平均年齢32.8歳であった。社会不安症状に関して、患者4名のLSASの総得点の平均は91.00点、健常者8名のLSASの平均は12.88点であり、有意に患者の方が高い数値を示した。またHDRS得点も、患者平均17.25点、健常者平均が0.63点であり、患者群では社会不安症状に伴い軽度の抑うつの合併が認められた。 画像解析の結果では、健常群では課題条件時に後頭側頭葉の紡錘状回および上側頭回における賦活がほぼ全例に共通して認められた。一方SAD患者はこれらの領域の賦活の程度が一定せず、症例による個体差が大きかった。症例によっては賦活量が少なく、逆に前頭葉領域を含む広範な賦活を認める症例もあった。 SADに関するこれまでの画像研究は扁桃体の異常を中心に報告されているが、今回の結果から社会状況下におけるヒトの表情認知に関して、SADでは紡錘状回、側頭回、前頭葉領域を含む複数の脳部位における機能異常が存在する可能性が示唆された。次年度ではさらに症例を増やしグループ解析を行う予定である。
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