研究概要 |
多数例での検討を行うために,横浜市立大学医学部精神医学教室に保存の剖検脳に加えて,東京都精神医学総合研究所,東京都立松沢病院,さわらび会福祉村病院に保存の剖検脳から,本研究の実施に必要な症例の剖検脳を集めた。今回集めたレビー小体型認知症の剖検脳の総数は,約60例であった。まず,これらの症例の臨床記録から,DLBの臨床症状である進行性の認知障害,パーキンソニズム,幻視,動揺性の認知障害,REM睡眠行動障害とその他の症状について,出現時期,出現期間,重症度を調べた。 次いで,剖検脳から薄切切片を作成し,一般染色・特殊染色によって病理学的診断の再確認を行った。さらに,α-シヌクレイン免疫染色,タウ免疫染色,アミロイド免疫染色によって,レビー小体,神経原線維変化,老人斑の分布と密度を調べ半定量的に評価した。 一方,筆者らは,本研究費受託前より,既にレビー小体型認知症を含めた神経変性疾患の臨床病理学的研究を行っており,こうした研究を継続した。まず,レビー小体型認知症における血管病変の合併率と血管病変の有無による臨床症状の違いについて調べ,レビー小体型認知症では血管病変の合併率がアルツハイマー型認知症に比べて高く,血管病変は特にパーキンソン症状の悪化に関与していることを明らかにした。また,レビー小体型認知症でしばしばみられる幻視に関する病理学的変化について調べた。その結果,幻視を伴うレビー小体型認知症では,視覚伝導路の変性がみられる頻度が高いことが示された。これらの研究成果は,既に論文として公表した。
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