レビー小体型認知症(DLB)は、変性性認知症の中でアルツハイマー型認知症に次いで頻度が高く、現在最も注目されている認知症の一つである。その臨床症状の特徴は、進行性の認知障害、パーキンソニズム、幻視、動揺性の認知障害、REM睡眠行動障害なのであるが、それぞれの症状の原因となる病理学的背景は十分には解明されていなかった。本研究は、臨床記録の評価と剖検脳の病理学的検索によって、DLBのさまざまな臨床症状の原因となる病理背景について明らかにすることを目的とした。 今同の検討では、約60例のDLBの剖検脳とその臨床記録を用いて研究を行った。まず、DLBでみられる血管病変と臨床症状の関係について調べたが、DLBでは外傷性と考えられる肉眼的出血が多くみられ、一方微小梗塞はアルツハイマー病に比べて少なかった。微小梗塞を有さないDLBでは、初発症状は記憶障害であることが多かったが、微小梗塞を有するDLBでは初発症状はパーキンソニズムが多く、微小梗塞の有無がDLBの初期症状に関係している可能性が示された。 次に幻視や視角認知障害の病理学的背景の検索を行った。今回の検討では、視角路と扁桃体のレビー病変が強い症例ほど幻視や視角認知障害が強いことが明らかになった。 またパーキンソン症状については、かねてから指摘されているように、黒質線条体路との間に関連がみられた。 一方、動揺性の認知障害やREM睡眠行動障害については、今回の検討では、原因となる病理学的所見は明らかにされなかった。
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