研究概要 |
パニック障害の代表的治療薬であるパロキセチンの血中濃度、およびパロキセチン血中濃度の決定因子として重要なcytochromeP450(CYP)遺伝子多型とパニック障害の臨床症状の推移・各個体での副作用出現との関係を解析し、治療反応性や副作用出現の投与前予測をめざし、パロキセチンによるパニック障害のオーダーメイド(個別化)治療の確立を目的とする。本研究は今日ではどの研究室でも容易になっているpolymerase chain reaction法などの分子生物学的手法によりCYP2D6のような薬物代謝酵素遺伝子多型とパロキセチン血中濃度とパニック障害の臨床症状の推移・各個体での副作用出現との関係を解析することによって、パロキセチンに対する臨床効果・副作用を予測できるか否かを検討することを目的としている。平成18年度の研究結果としては、末治療のパニック障害患者21例を対象としてパロキセチンによる初期治療(2週間)を行い、パロキセチン血中濃度と初期治療反応性の関係について検討を行った。重回帰分析により治療反応性に影響を与えている因子の分析を行ったところ、症状改善率とパロキセチン血中濃度との間に有意な負の相関がみられた。本研究によりパロキセチンによるパニック障害の初期治療においてパロキセチン有効血中濃度に上限閾値が存在する可能性が示唆された。年齢、性別、体重、喫煙本数、常習飲酒、うつ病の合併、広場恐怖の有無、初診時パニック発作回数及び重症度、副作用などの各因子と症状改善率との間に有意な相関は認められなかった。CYP2D6遺伝子多型とパロキセチン血中濃度との関連については、変異アリル数により3群に分け(変異アリル数=0,1,2)、検定を行ったが、3群間に有意差がみられなかった。しかし変異アリルを2個もつ群は他の群より単位体重あたりの血中濃度が高めであった。
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