パニック障害の代表的治療薬であるパロキセチンの血中濃度、およびパロキセチン血中濃度の決定因子として重要なcytochromeP450(CYP)遺伝子多型とパニック障害の臨床症状の推移・各個体での副作用出現との関係を解析し、治療反応性や副作用出現の投与前予測をめざし、パロキセチンによるパニック障害のオーダーメイド(個別化)治療の確立を目的とする。本研究は今日ではどの研究室でも容易になっているpolymerase chain reaction法などの分子生物学的手法によりCYP2D6のような薬物代謝酵素遺伝子多型とパロキセチン血中濃度とパニック障害の臨床症状の推移・各個体での副作用出現との関係を解析することによって、パロキセチンに対する臨床効果・副作用を予測できるか否かを検討することを目的としている。平成19年度の研究結果としては、パニック障害患者を対象としてパロキセチンによる初期治療(10mg×2週間)を行い、パロキセチン血中濃度、セロトニン・トランスポータープロモーター領域(5-HTTLPR)遺伝子多型等の治療反応性に影響を与える因子について検討を行った。その結果、パロキセチン血中濃度、5-HTTLPR遺伝子多型と症状改善率との間に有意な相関が認められた。2週間以内の治療初期においてパロキセチン血中濃度高値と5-HTTLPR遺伝子多型L型は治療反応性を低下させる因子と考えられた。この結果は近年の脳PET研究や基礎実験によっても裏付けられている。また甲状腺疾患においてパニック障害様症状がみられることから、甲状腺機能と治療反応性との関連についても検討がなされ、治療前血中TSH値が正常範囲内で高いと治療反応性が良いという結果となった。今後も症例数を増やし、さらに詳細な報告を行う予定である。
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