われわれは、エピジェネティック変異やゲノム不安定性が報告されている統合失調症の病因として、代表的なヒトレトロポゾンであるAluが深く関与しているとの仮説を提唱した。本研究では、統合失調症トリオゲノムDNA(患者とその両親)を対象とし、レトロポゾンAluの病因的役割を明らかにし、患者ゲノム内において特異的にAluが挿入している領域を同定し、疾患への寄与の高い遺伝子を同定することを目的とした。前年度に実施したAlu特異的PCRとサザンハイブリダイゼーションを組み合わせたスクリーニング法によって選抜された統合失調症候補遺伝子について、Alu挿入の詳細な変異解析を行った。変異解析にはDNA Walking法およびNested PCR法を用い、Aluによって引き起こされる二次変異についても同定を試みた。その結果、患者特異的Alu挿入変異が検出されたが、同時にAluを介したartifactも多数出現し、本遺伝子周辺領域における二次変異の同定には至っていない。また前年度の研究で、Alu特異的PCR法とサザンハイブリダイゼーション法を組み合わせたスクリーニング法が、Alu新規挿入の探索に有効であることが明らかとなった。よって、今年度はその網羅的なスクリーニング法の開発を目指し、Alu特異的PCR法にマイクロアレイ法を組み合わせることにより、新規Alu挿入変異の同定を試みた。その結果、28の遺伝子において患者特異的シグナルが検出され、これまでに統合失調症候補遺伝子を含む3つの遺伝子において新規Alu挿入変異の全域の同定に成功している。引き続き、これらの遺伝子における新規Alu挿入変異について、その詳細な変異解析を試みていく予定である。
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