近年、子どものメンタル-ルスが危機に瀕している。少年犯罪、不登校、ひきこもり、自殺または自傷行為、学校での問題行動などが増加しており、そのうちのいくらかは精神的な障害によって引き起こされている。そのような子どもへの最も集中的な治療法として、入院治療がある。しかし、そのコストは高く、日常生活から子どもを引き離してしまうものでもあるため、入院治療の有効性を検討することが重要視されている。しかし、特に日本においては、児童思春期精神科病棟の治療効果などアウトカムに関する研究はあまり行われていなかった。そこで、本研究では、児童思春期精神科入院治療の退院後の有効性を検討すること、およびどのような要因(入院前、入院中および退院後)が良いアウトカムに影響するかを明らかにすること、を目的とした調査を実施する。 18年度は、ベースラインである入院時、入院中および退院時のデータの整理および解析を行い、追跡調査に必要な項目を絞るとともに研究計画について検討した。その結果、精神科病棟に入院する子どもの多くは重症であり、家族の問題も抱えていることが多く、入院治療は特に重症な子どもに効果的であることが明らかになった。また子どもの多くが入院治療に満足していると回答していた。 19年度は、診断、入院歴、入院日数、症状、QOL、不登校の有無、就労の有無等の項目を含めた追跡調査を実施した。調査はカルテ調査にて行った。追跡対象者は109名、追跡期間は2年から5年と長期であった。調査は国立精神・神経センターの倫理委員会の承認を得て実施した。 今年度は、追跡調査を終了し、その結果について検討を行った。その結果、約32%が再入院していることが明らかになった。また少なくとも30%が何らかの就労をしていた。再入院率は統合失調症圏および摂食障害において高く、発達障害において低い傾向が見うけられた。
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