研究概要 |
【目的】本研究は,医療観察法指定入院医療機関に入院する物質使用障害の併存が認められる患者を対象とする物質使用障害への認知行動療法プログラムを開発し,その効果測定を行うことを目的としている。 【方法】今年度は,物質使用障害を併発する対象者の臨床的特徴を明らかにする調査を行うとともに,昨年度まで実施されてきた物質使用障害治療プログラムの内容の見直しを行った。 【結果】物質使用障害を併発する対象者の臨床的特徴としては,物質使用障害を併存する対象者は,その主要な精神障害が統合失調症である者よりも気分障害やその他の精神障害である者に多く,精神作用物質の使用が対象者の病態を加重している可能性か示唆された。対象行為種別の検討では,物質使用障害が併存する対象者は,殺人よりも放火である者が有意に多く認められ,精神作用物質のなかでも特にアルコールと放火との密接な関係が示唆された。 物質使用障害治療プログラムの内容の見直しについては,非専門的な医療者がファシリテーターを担当することができるように,ワークブックの知識的な記述を増やし,薬物再使用の引き金として,アルコールの問題を積極的にとりあげるようにも配慮した。そのようにして改訂されたワークブックは,実際のプログラムで使用されたうえでさらに改訂が重ねられ,最終的に28セッション,計202ページのワークブックを完成し,印刷・製本を行った。次年度にはこれを用いた治療プログラムを実施し,その効果測定を実施する予定である
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