1.細胞膜透過性ペプチドとIgG抗体との結合体の調製法の確立 抗体一分子あたりに導入する細胞膜透過性ペプチドの数(平均結合分子数)が、その結合体の体内挙動に及ぼす影響を検討することを目的とすることから、様々な平均結合分子数の結合体を調製する必要がある。検討の結果、おおよそ目的とする平均結合分子数の結合体を種々、作製可能であることを確認した。 2.体内分布の検討 細胞膜透過性ペプチド-IgG結合体をIn・111で標識し、その体内分布を検討した。ペプチドの平均結合分子数の増加に伴い、肝臓への集積の増加とそれに対応する血液からの消失の促進が観察された。肝臓への蓄積傾向をよりよく知るため、肝臓/血液比の経時変化を調べた結果、ペプチドを導入していないIgGと比べ、IgG一分子に対して二分子以上のペプチドを結合させた場合には肝臓への集積が増加するが、1:1のモル比で結合させた場合には同程度となることが示唆された。したがって、肝臓への非特異的な集積を増加させないためには、ペプチドとIgGとが1:1で結合した均一な結合体の作製方法の確立が必要と考えられた。 3.肝臓での細胞内放射活性分布と細胞内放射活性の化学形の検討 最も高い集積を示した肝臓について、密度勾配遠心法、超遠心法、市販の細胞分画キットを用いて細胞内分布を検討した。また、肝臓ホモジネートと核画分の放射活性を分子箭HPLCで分析した。その結果、平均結合分子数が3程度の結合体ついては、肝臓に移行後、一部が未変化体として核へ移行し、一部は直接あるいはサイトゾルを経由してリソソームヘ移行して代謝を受けた可能性が示された。今後、平均結合分子数が1程度の結合体について同様の検討を行うと共に、オートラジオグラフィにより細胞内分布を検討し、得られた結果を比較することにより、平均結合分子数が細胞内分布に及ぽす影響を明確にできるものと考える。
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