放射線治療と免疫細胞治療の併用による革新的ながんの治療法を開発する」ための科学的な根拠を、分子レベル、細胞レベル、個体レベルで確立するために、担癌マウスモデルを用いて、腫瘍に電子線照射を施し、電子線照射が生体の免疫系に与える効果を細胞レベル、分子レベルで検討した。C57BL/6マウスの皮下にB16メラノーマ細胞(1x10^6)を接種し、腫瘍塊を形成さ10日後、腫瘍径が1cmまで増殖したのち腫瘍局所に6 Gyの6 MeV電子線を単回照射した。照射後1日後3日後の腫瘍、所属リンパ節、対側のリンパ節、脾臓を摘出し、各コンパートメント中のリンパ球をフローサイトメーターで解析し、さらにmRNAを注出してサイトカイン、ケモカイン遺伝子を解析した所、放射線照射を受けたマウスのリンパ節、脾臓内にMyeloid-Derived Suppressor Cell(MDSC)と呼ばれる抑制性の細胞である Gr-1+CDllb+細胞が増加していることが明らかにした。また、CD4+CDllb陽性の抑制性マクロファージが増加していた。一般に放射線照射による細胞傷害に対して、生体は、MHCクラスI分子の発現の増強、hspなどのストレス蛋白の発現、サイトカインの発現など、免疫応答に対して正のシグナルを与えることが知られていたが、その作用を打ち消すかのように抑制性の細胞が誘導されていることを明らかにした。今後放射線照射後に誘導される抑制性の細胞を標的としてその制御法を確立することにより、より効果的に免疫療法との併用が可能になると期待される。
|