本研究の最終的な目的は、肝細胞癌に対する樹状細胞療法において最も有効な樹状細胞の生体への移入方法を考案することにある。そして、その研究をすすめるにあたって必要となる生体内に投与した樹状細胞の動態を精細な画像で経時的に追跡する手法を確立することにも重きを置いている。 そのためには画像で追跡できる標識樹状細胞を作成する必要があり、本年度はこれを目標に研究を進めてきた。今後の樹状細胞研究を進めていく上で扱いやすいラットを実験動物に選び、樹状細胞を単離し、培養することから着手した。まず、これらに必要な器材、薬品、備品の購入ならびに設置を行った。ラット末梢血をPancollラットあるいはNyco Prep 1.077 Animalを用いた密度勾配遠心分離にかけて単球を分離し、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン-4を添加した培地で培養することにより樹状細胞を誘導、単離する方法を採用することとし、培地にはRPMI1640あるいはAdvanced RPMI 1640を用いることにした。培養した細胞はOX62、CD11a、 ED1などの発現を免疫組織科学的に検討することにした。培養樹状細胞の標識には超常磁性酸化鉄製剤であるリゾビストを用いることにし、機能を損なうことなくこれを細胞内に導入するため、Poly-L-lysine hydro bromide、 SuperFect Transfection Reagent、 Lipofectamine LTX Plus Reagentをトランスフェクション試薬として使用する方法を検討しており、現在その濃度、作用時間などの最適な条件設定を検討中である。今後、これらの中から最も効率的なリゾビストの樹状細胞内導入法を選定し、標識細胞の増殖、毒性、細胞機能などを確認した後にin vivoでの樹状細胞投与の実験に進んでいく予定である。
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