本研究の目的は、ターゲット分子認識部位を生体に投与して標的分子への特異的な集積を達成した後、高感度造影部位を投与してターゲット分子認識部位に結合させ、それを画像化するという二官能性化合物の設計概念に基づき、がんの悪性度診断を可能とするMRI用高感度造影剤を開発することにある。平成18年度にはターゲット分子認識部位、高感度造影部位の作製に成功したことから、平成19年度にはインビボでのプレターゲティング法の有効性を評価した。1.担がんマウスの作製:C3H/Heマウス右足にマウス乳がんFM3A細胞(10^6個)を皮下移植し、2週間飼育することで実験に用いるのに十分な大きさ(470±320mm^3)のがん組織を有する担がんマウスを作製した。2.プレターゲティング条件設定のための放射標識抗体の体内分布実験:担がんマウスを用いて、Tc-99m標識抗MT1-MMP抗体の体内分布を臓器摘出法により経時的に調べた。その結果、がんへの放射能集積は投与48時間後に全摘出臓器中、最も高い値を示し、腫瘍血液比は約1.5となった。このことより、プレターゲティング法のタイミングは投与48時間後に設定した。3.インビボにおけるプレターゲティング法の有効性 評価:ターゲット分子認識部位としてビオチン化抗MT1-MMP抗体を、高感度造影部位としてI-125標識ストレプトアビジンを用い、体内分布を経時的に調べた。その結果、投与6、24時間後における腫瘍血液比はTc-99m標識抗体の4.1倍、8.6倍であったことから、インビボプレターゲティング法の有効性が示された。以上の結果より、高感度造影部位として(Gd-DTPA)n-PAMAM-アビジンを用いることで、MRIによるがんの悪性度評価が可能であると考えられる。
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