癌細胞は複数の分子にまたがる変異の蓄積によって悪性度を獲得していることが多い。なかでも転写因子は、癌細胞において免疫応答・抗アポトーシス・細胞増殖に関与するタンパク質群を制御し、結果として癌細胞を治療抵抗性に導いており、癌細胞の生死の方向を定めていると考えられている。本研究では、癌細胞の転写因子群を遺伝子治療技術を用いて制御し、放射線抵抗性癌の克服に繋げることを全体構想として開始した。 放射線抵抗癌モデルの樹立 脳神経膠芽腫・前立腺癌・骨軟部腫瘍など種々の癌細胞株を対象に2-10Gyの放射線照射を行い、コロニーフォーメーションアッセイとMTTアッセイにより放射線感受性を調べた。この結果、同じ前立腺癌の細胞株であるPC3とLNCaPをそれぞれ放射線抵抗性と放射線感受性のモデルとして使用することとした。 癌幹細胞株の樹立 研究期間中に癌幹細胞に関する報告が相次ぎ、中でも癌幹細胞は放射線抵抗性を示すことが示唆された。本件研究にても同一の癌細胞株を用いた幹細胞(放射線抵抗性)と非幹細胞(放射線感受性)との比較は有用性が高いと判断し、乳癌細胞を用いCD44+CD24-幹細胞の樹立を行うこととした。 放射線抵抗性に関わる転写因子群の同定 上記により樹立された放射線抵抗性/感受性の細胞株を使い、転写因子アレイによって放射線照射前後における転写因子発現の網羅的解析を順次、行っている。この作業により放射線抵抗性に関わる、1つまたは複数の転写因子を同定していく。
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