研究概要 |
本年度は,体内臓器に関する生理学的運動による照射中の挙動ならびに線量評価に関わる不確定因子を検討した.続いて,次年度の研究として臓器の動きと線量投与不確定度を定量的に評価するため,3次元的な呼吸運動の再現が可能な呼吸運動ファントムの作製および呼吸運動をモデル化して計算シミュレーションを行う体制を整えた. 照射中の体内臓器の挙動に関する解析として,腫瘍近傍に金マーカーを挿入した前立腺腫瘍の症例を検討した.方法は動体追跡装置を用いて照射中の金マーカー座標を取得し,算出されたintra-fractional setup errorから照射中の動きに対する至適PTVマージンを求めた.過去の治療患者55症例で検討した結果,系統誤差と偶然誤差はそれぞれ3軸方向に0.3-0.6mm,1.5-1.9mmであった.これより,照射中の動きを考慮しない場合に比べ1.2-1.4mm広くマージンが必要であることが明らかとなった.線量評価の不確定因子の解析として,肺がん定位照射を行った54症例の治療計画から計算アルゴリズムの違いによる影響を検討した.従来のClarkson法(C法)とモンテカルロ手法を用いたSuperposition法(S法)を比較した結果,C法ではS法に比べて腫瘍線量D_<95>は平均9.5%過大評価された(p<0.01).一方,正常肺や脊髄などリスク臓器線量は有意差が見られなかった.S法はC法に比べ正確な線量評価が可能であることが確立されており,呼吸運動モデルを用いた線量評価でも有用性が高いことが示唆された. 呼吸運動ファントムの作製では,電動スライダおよび制御コントローラを利用したロボットを構築し3次元的な呼吸運動の再現を可能とした.次年度は疑似腫瘍モデルを作製し,治療計画・照射時の不確定因子について実測と理論の両面からのアプローチを試み,未知の現象や特性を解明していく予定である.
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