研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き臓器の動きと線量投与不確定度を定量的に評価するため,3次元的な呼吸運動の再現が可能なファントムを使用し、呼吸運動をモデル化した疑似腫瘍モデルを構築して治療計画および照射時における不確定因子についてシミュレーションを行った。加えて,実測に基づいた線量評価システムとしてR工SA(放射線誘起表面活性)検出器の臨床応用を目指して開発を行い,RISA検出器の放射線に対する特性評価を行った。 本研究において開発した呼吸運動ファントムは3次元的な呼吸運動の再現を可能とし,治療計画CT撮像時の呼吸運動に伴う疑似腫瘍の描出およびモーションアーチファクトに関する解析が可能となった。呼吸運動モデルに基づくシミュレーションと実測の間には良い一致があり,腫瘍の動き(腫瘍径,振幅、位相等),計画CT撮像条件,照射技術に関する情報をパラメータ化することにより,個々の臓器に対する至適マージン量の予測を可能とした。 線量評価システムとしてR工SA検出器の放射線応答を解析した結果,印加電圧特性に関しては数V程度から立ち上がり応答があり,電圧上昇とともに次第にプラトーとなることが確認された。線量率応答特性に関しては広範囲において直線比例となり,検出器のダイナミックレンジは広いことが確認された。検出器の構造(薄膜や基板の厚さ)によりエネルギー依存があることが示された。プラスチック等の生体組織に近い組成の素材を利用が可能であることから,臨床応用に向けた研究開発が期待された。 本研究では呼吸運動に伴う臓器において動きを数式モデル化し,4次元放射線治療へ最適化させるための基礎研究を行った。研究結果から腫瘍の動き等に関する情報をパラメータとした至適マージン算出法および新たな線量測定システムの開発を行い,従来よりも高精度で放射線治療計画を行うことが可能となった。
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