血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)は、Thymidine Phosphorylase(TP)と同一タンパク質であること、さらにその酵素活性は、腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連があることが明らかとなっている。またTPが、正常組織に比べ様々な固形腫瘍において高レベルで発現することが古くから知られている。 本研究では、PD-ECGFの発現すなわち腫瘍における血管新生をin vivoで選択的にイメージングできる放射性薬剤の開発を目的とした。薬剤には、TP阻害活性の高いピリミジン誘導体を設計し標識合成を行うために、まずTPの基質であるチミン、5-フルオロウラシル(5-FU)のC-11標識合成法を確立することとした。 これまでピリミジン骨格はウレアおよびチオウレア誘導体を用いるカップリング反応によって合成されてきた。カルボニル化試薬として活性なボスゲン類を用いれば、より簡便に緩和な条件で収率よくピリミジン骨格の形成が可能であると考え、β-アミノアクリルアミド誘導体を新規に合成し、これらの前駆体とトリホスゲンとの反応によるチミン、5-FUの合成を検討した。アルデヒドに対してアンモニアを作用させシッフ塩基を経由する方法により新規な前駆体の合成に成功した。この新規前駆体をアルカリ金属塩とし、トリホスゲンとの反応の結果、定量的にチミン、高収率で5-フルオロウラシルを与えることに成功した。そこで、本合成法を[C-11]ホスゲンに応用したところ[C-11]チミン、[C-11]5-FUの迅速かっ簡便な標識合成に成功した。今後、本[C-11]ピリミジン骨格標識法を用いて、TP阻害化合物の標識化を目指し、血管新生イメージング剤としての検討を行う予定である。
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