1.データベースの構築 平成18年度において、臨床データの収集、カルテを用いての臨床背景因子ならびに心事故の調査、心筋血流SPECTの所見の評価はほぼ終了し、データベースとして整理、構築した。予測因子として使用するものの候補として22項目を検討することになった。目的変量は全心事故とhard eventの2項目である。 2.データ解析 上記のデータベースを使用し、予備実験としてincremental stepwise法による線形回帰を試みた。その結果、全心事故の予測因子は、心筋壁運動異常、心不全の既往、手術危険度、年齢であり、hard eventの予測因子は、心筋壁運動異常、心不全の既往、手術危険度、心電図でのQ波、安静時心筋血流、血行再建術の既往であった。それぞれの評価におけるROC曲線下面積は0.748と0.864であった。次にこの結果を改良するために、主成分分析を行って各特徴量を直交化させて線形回帰を行ったが、判別に改善は見られなかった。 そこで、back-propagation neural network(BPNP)を用いて予測を行う方法を検討した。汎用性を高めるために非線形性が得られ、かつ単純な構成である中間ニューロン2個のネットワークで実験を行った。BPNPではsigmoid kernelを使用し、学習係数は0.01、学習回数は100回とした。しかしながら高いfittingは得られなかった。 主成分分析を導入しても結果が好転しない理由として、データが多価関数になっていることが考えられた(入力が同一でも結果が異なっている状態)。そこで、平成19年度においては、非線形モデルについて各種パラメータの設定や回帰モデルに用いるパラメータの見直しなどをさらに詳しく検討し、support vector machineの利用も視野に入れてさらなる予測の改善を試みる予定である。
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