放射性医薬品の体内分布を測定する新しい手法として、我々は天文学領域で研究されているガンマ線計測用カメラ(コンプトンカメラ)を医療に応用することを考案した。医療に用いるガンマ線は低エネルギー領域であり、コンプトンカメラによる低エネルギー領域の画像化は世界中でもほとんど行われていない。 平成18年度では、コンプトンカメラによる画像化か可能な低エネルギー領域を求めた。ごくわずかの放射能(1MB_q以下)を有する放射性核種を用いて点線源を作り、様々な核種の画像化を行った。その結果、現在医療に用いられている365keV(I-131)および511keV(F-18)の画像化に成功した。また、画像再構成においてノイズ除去フィルタを用いると線源の局在を明確化できることが判明した。次に平面ファントム(京都科学社製FS-3型フラッドソースファントム)を用いてコンプトンカメラの二次元平面感度分布を測定し、平成19年度には画像再構成を行う際に感度補正を組み込んだアルゴリズムを開発することに成功した。これらの改良を加えてみたものの、現段階のコンプトンカメラの空間分解能および角度分解能は従来のガンマカメラに及ばないことがわかった。また、平成19年度では大視野を有する大型コンプトンカメラの開発を行い、1メートルのI-131線線源の画像化に成功した。まだこれらは開発途上であるが、コンプトンカメラを活かせる臨床研究を行うための予備段階として、従来のガンマカメラやPETカメラを用いた研究を報告した。今後、カメラそのものの性能向上とともに、臨床応用するためのテーマを考案する必要があると考えられた。
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