腎不全患者では心血管系の合併症が多く、特に透析患者の死因の約50%は心臓死が占めている。今回私は、腎不全のモデルラットを作成し、心疾患の早期診断に核医学的手法を用い、検討を行った。対象は、腎不全モデルラット(adenine4週投与群(4w群)10匹、adenine6週投与群(6w群)11匹)および対照群(control)6匹である。方法は、心筋脂肪酸代謝を反映する放射性医薬品である^<125>I-BMIPP 0.8MBqをラットの尾静脈より静注し、15分後に心臓を摘出し、心臓のカウントを測定し、投与量に対する心臓への放射性医薬品の取り込みの割合であるMyocardial uptake rate (MUR)を算出した。結果は、腎不全モデルラットの腎機能(creatinine)は4W群1.37±0.09mg/dl、6W群1.43±0.29mg/dlでcontrol群0.21±0.01mg/dlと比較して統計学的有意差をもって高かった。病理学的検討も行ったが、腎不全モデルラットの腎臓では尿細管拡張、結晶析出、間質の炎症細胞浸潤、肉芽腫形成などが認められたが、心筋細胞には組織学的異常は認められなかった。6w群の方が腎障害の程度がより高かった。MURは4W群3.52±0.70、6W群2.85±0.55でcontrol群6.05±1.25と比較して統計学的有意差をもって低下していた。以上より腎不全モデルラットにおいては心筋細胞の形態学的異常が生じる以前より脂肪酸代謝機能の低下が生じていると思われた。その機序として腎不全による体液量増多→レニン・アンギオテンシン系活性化→交感神経機能充進→ATP消費増大によるATP枯渇により心筋細胞内でのBMIPPのアシル化が阻害され血中に逆拡散していることが原因ではないかと考えられた。
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