エリスロポイエチンによる再灌流時心筋保護療法に関しては、データが集積されつつあり、非投与例に比し、心筋リモデリング、心機能低下を抑制する効果があると報告されている。しかし、抗アポトーシス効果を持つ薬剤による治療だけで、慢性期心機能は心不全に陥らない程度に維持されるのか、予後の改善は十分なのか、薬剤の至適投与量、投与のタイミング等、未だ十分解明されていない事項が多かった。そこでわれわれは、研究実施計画に基づいてまず至適投与量、タイミングについての実験を行った。結果としては、エリスロポイエチンの量が200U/kgが最も低容量で虚血再灌流傷害を最もよく抑制しており、投与タイミングは、再灌流直前に静脈内投与を行うのが最も効率よく虚血再灌流を抑制でき、臨床的な条件にも合致していると考えられた。^<99m>Tc-Annexin Vにより虚血再灌流傷害に陥った心筋細胞およびエリスロポイエチンによって十分これが抑制されている様子がよく描出されていた。また、心エコーにて確認したところ、エリスロポイエチンによって虚血再灌流傷害が抑制され、^<99m>Tc-Annexin Vの集積が軽度なグループにて4週間後のリモデリングは、エリスロポイエチンを投与していないグループに比べ軽度であり、^<99m>Tc-Annexin Vによって治療効果および梗塞後心筋のリモデリングの予後推定が可能であった。現在虚血再灌流傷害の予防として臨床応用されている薬剤はなく、さらに虚血再灌流の程度を評価できるデバイスもないため、今後非常に発展が期待される結果であると考えられた。
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