本年度(〜平成19年3月31日)の研究実績 1、PVA組織被覆剤の体内での物性の推定: PVAの生体内での動態を推定するため、ブタ血清を用いて溶解特性を検討する。アセトアセチル化PVA試料2種類を1g定量しブタ血清10mlに混合し、溶液を連続攪拌して粒子が肉眼的に消失する時間を測定した。アセトアセチル化度5.5%、及び8.9%の試料共に、攪拌開始後約2分で粒子は肉眼的には消失しゼリー状に変化した。 2、実験動物肺での被覆性能評価:ブタに全身麻酔下で気管内挿管を行い、換気を停止しX線透視下に、肺表面を20G穿刺針にて穿刺し肺瘻を作成した。一方、同様の手技を用いて電気メスで焼灼による肺瘻(約1×1cm)を作成した。実験1で選定された組成のPVA試料2種類を注入し肺換気を再開し、換気に伴う肺瘻、出血の防止効果を肉眼的に観察した。20G穿刺針にて穿刺し肺瘻に対してはアセトアセチル化度5.5%、及び8.9%の試料共に20cmH20の陽圧付加に対しても空気漏れや出血を生じなかった。電気メスで焼灼して作製した肺瘻に対しては空気漏れや出血の防止効果は認められなかった。 3、生体吸収性、抗原性の検討:カテーテルから選択的に腎臓に注入したPVAの注入後1ヶ月の摘出腎臓をホルマリン固定して組織学的検索を行なった。PVAはホルムアルデヒドと反応し不溶性のホルマール化PVAに変化すると考えられたが、臓器には残存PVAは確認されなかった。塞栓した部位には軽度の炎症細胞浸潤が残存しており一定期間のPVA粒子の存在が示唆された。
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