本研究はポジトロン断層撮影法(以下PET)で得られる脳機能画像の新しい処理法を提案するものであり、ブートストラップ法を用いて一回のPET測定から脳機能画像の誤差を推定する試みである。本年度は、最初にテストデータとして健常成人志願者(5名)に対して脳血流定量測定を目的とした^<15>O標識水によるPETデータ取得を行った。測定はリストモードでの測定が可能なPET装置(Eminence SOPHIA[SET-3000GCT/M]、島津社製)を用いた。リストモード測定はデータ量が大量でありハードウェア・ソフトウェア的に大きな負荷となるが、測定条件を最適化することにより十分測定可能であり臨床利用できることを確認した。次に、測定データからPET画像誤差および機能画像誤差を推定するための計算機システムの構築を進めた。リストモードデータから処理に必要なデータへの変換を確認した。今後は、実際の再サンプリングやPET画像誤差から機能画像誤差を計算するルーチンを組み込むことが課題となる。また本年度においては、本手法の臨床応用可能性も模索した。本研究で対象としている脳血流量は、^<15>O標識水(H_2^<15>O)によるPETデータを数学モデルで解析することにより得られる。脳梗塞患者の検査においては炭酸ガス吸入や薬剤投与による血流変化の測定がしばしば行われるが、本手法を用いることにより反応性の低下している脳部位を統計的に検出して視覚化(マッピング)できると考えられた。
|