次の三つの課題に分けて取り組み、具体的成果を挙げた。 (1)各種ポルフィリン化合物の体内挙動を観察するための動物用PETの導入と整備。 (2)ポルフィリンの癌組織集積性に関する基礎的な実験研究。 (3)新しいポルフィリン誘導体の開発、新しい物理的診療・治療手段の開発。 一連の研究による成果は、ポルフィリン誘導DDS型癌医療開発の基礎を築くものであり、次に計画している臨床研究の強い基盤を形成するものとなった。(1)では、本研究の基盤となる動物用マイクロPETを導入し、約1年をかけて調整・整備を行い所定の性能を発揮するに至った。(2)に関しては、ラット正常胃粘膜より樹立した培養細胞系RGMIと、そのmutant cell-line RGK1(腫瘍)の対を用いて細胞レベルの実験を中心に研究を進め、ポルフィリンの癌集積性の機序は臓器に関らず癌組織内の高NO濃度に由来する事が示された。この結果は、胃癌・前立腺癌などに無効であったFDG-PETと異なってより広範に癌診断が可能であることを示したことになる。また、^<59>Fe-ポルフィリンの集積について、NOや赤血球分化を誘導するサイトカインerythropoietin(EPO)による集積促進の可能性、その集積時間への影響などを明らかにした。(3)については、ポリフィリンPET用薬剤の作製を進めた。また、PET診断と相補的な手段になるポルフィリン誘導体を用いた^<19>Fポルフィリン-MRI法、Mn増感ポルフィリンMRI法の開発をめざして薬剤を製作した。その有効性について放医研の7T-MRI装置を用いてテストを行った。先ずは、MnポルフィリンのMRI緩和能の測定を行い、造影効果のある濃度を確認した。
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