研究概要 |
本研究の目的は、悪性脳腫瘍の正常組織との境界を、明瞭に区別することを可能とする放射性薬剤の開発である。腫瘍細胞増殖の最も盛んな正常脳組織境界に特異的に集積する放射性薬剤の開発を目指し、増殖に必要な核酸合成および細胞活動との両面で使用されるアデノシンに着目し、アデノシン誘導体である^<11>C-6-メチルメルカプトプリンリボース(^<11>C-MMPR)を考案、基礎検討を行なった。前年度、^<14>C-MMPRについてアデノシンキナーゼとの反応性をインビトロで検討した結果、^<14>C-MMPRは容易にリン酸化を受けることが確認された。細胞を用いた検討では、^<14>C-MMPRの細胞内への取り込みはヌクレオシドトランスポータによるものと考えられ、細胞内に移行したのちリン酸化されることが本研究中に報告された結果(Fotoohi AK et.al. Biochemical Parmacology 2006,72,816-823)と同様に示された。本年度、ラット(F344系、雄性、8週齢)の脳に腫瘍を移植したモデルに、^<14>C-MMPRと同時に一般に広く用いられる腫瘍検出放射性薬剤である^<11>C-メチオニンおよび^<18>F-FDGを投与したところ、それぞれの投与後60分の腫瘍/大脳皮質比は、^<14>C-MMPR:10、^<11>C-メチオニン:4、^<18>F-FDG:0.6であり、局所的には^<14>C-MMPRは本研究課題である高精度脳腫瘍画像化放射性薬剤であると考えられる。一方、全身の動態において、それぞれの投与後60分の腫瘍/血液比が、^<18>C-MMPR:0.2、^<11>C-メチオニン:6、^<18>F-FDG:4であり、その他^<14>C-MMPRが肺(3%dose/g)および心臓(2%dose/g)に多く取り込まれたことは、被爆の観点から臨床利用の上で大きな弊害となることを示唆し、また脳腫瘍以外への応用は困難であることを示唆した。
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