研究概要 |
移植医療において、超急性拒絶反応は移植片に対して反応する既存抗体があるときに起こると考えられており、補体と結合した抗体が内皮細胞を傷害しこれによって溶血や溶菌が起こる。しかし様々な捕体成分の活性化と、HLA抗体の関連は明らかでない。今回、flow cytometryを用い補体活性化を直接計測する方法を確立し、HLA抗体による補体活性化のメカニズムを明らかにした。 フロリダ大学にて移植待機中のHLA抗体感作患者血清を用い、移植ドナー患者のリンパ球に対する反応をflow cytometry、及びcomplement-dependent cytotoxicity(CDC) testにて計測した。またflow cytometryとCDC testとの比較を行った。さらに結合IgG量、IgGサブクラスと補体成分(C3b, C4d, C5b, C1q, C3d, iC3b, C5b-9)の比較検討も施行した。 ドナー患者のTリンパ球に対し、flow cytometryによる結合IgG量とCDC testとの間に有意な相関関係はみられなかった。またC3b活性は結合IgG量、IgGサブクラスによるのではなく、レシピエント血清/ドナーTリンパ球の組み合わせで決定された。すべての患者において優位なIgGサブクラスはIgG1であった。HLA抗体感作患者血清に対しC3bはほぼすべての患者で陽性であり、最も鋭敏な補体成分と考えられた。またC4d、C5bも有用なパラメータであった。 通常の仮説に反し、CDC test、結合IgG量、IgGサブクラスは補体活性化の予測因子としては精度が低いことが示された。HLA抗体の補体活性化を計測するために最も適したパラメータはC3bであることが示された。ヒト補体成分を測定することは、ドナー・レシピエント適合性の評価を進歩させる可能性がある。
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