平成18年度は、冷虚血再潅流直後の肝臓におけるROSの産生源の解明についての研究を行った。動物実験モデルはラット肝移植とし、以下の方法を用いてROSの産生源について検討を行った。 (方法) 1.ドナーラットの肝組織中Kupffer細胞をCl2MDP-1iposome法を用いて消去した。 Cl2MDP-liposomeを作成し、投与後48時間の肝組織をED-1により免疫染色して、Kupffer細胞が90%以上消去されている事を確認した。 2.ドナー肝をコントロール群とKupffer細胞消去群の2群に分け、レシピエントへ肝移植し、再潅流直後のROS産生量を比較した。 (結果)再潅流直後(15分後〜30分後)の肝組織におけるROS産生量は、コントロール群とKupffer細胞消去群で有意差は認められなかった。ただし、30分後〜45分後ではKupffer細胞消去群で有意にROS産生量が少ない結果であった。 (考察)再潅流後のROS産生にKupffer細胞が強く関与していることは多くの研究報告があるが、経時的な変化を見た報告はない。本研究では再潅流後30分までのROSはKupffer細胞由来ではなく、30分以降のROSはKupffer細胞由来である事を示唆している。 虚血再潅流直後(〜30分)のROSが炎症反応最初のスイッチとなる可能性があるため、本研究では〜30分までのROS産生源を遺伝子治療のターゲットとする予定である。 我々の予備実験の結果と総合し、再潅流直後のROS産生源は肝細胞であると仮定して、来年度はDominant negative Rho-kinase(DNRhoK)をドナーの肝細胞に導入し、Rho-kinaseを介した、ROS産生経路の存在を証明すると共に、肝細胞のRho-kinaseが虚血再潅流傷害の遺伝子治療のターゲットになり得ることを証明する予定である。(786字)
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